2023年3月から約1年間、ウェブインパクトはやまがたAI部主催の「第4回AI甲子園inやまがた」において、豊橋商業高等学校をサポートさせていただきました。学生たちはAI技術を駆使して豊橋市を活性化させることを目指し、弊社の支援のもとでさまざまな取り組みを行いました。
AI甲子園inやまがたとは
やまがたAI部は、2020年8月に活動を開始した山形県内の企業、教育機関、自治体が連携し、「One山形」として取り組むAIプログラミング教育を通じた「デジタル人材育成プロジェクト」です。参加校は山形県内に留まらず、現在では全国約40校の生徒が参加しています。やまがたAI部では、デジタル人材の育成に向けて様々な取り組みを行っていますが、その中でも一大イベントとして開催されるのが「AI甲子園」です。
AI甲子園は、各校が一年間の集大成を披露し、AIの技術成果を競うイベントです。今年度は2024年3月20日に山形市立商業高等学校の輸誠ホールで開催され、県内外から34校が予選に参加し、全15校、総勢140人の生徒が本戦に臨みました。
豊橋商業高校への協力活動
ウェブインパクトは、豊橋商業高等学校のメンターとして月に一回程度訪問し、AI甲子園に向けたワークショップを開催しました。上半期では、やまがたAI部のオンライン座学動画を基にしたアドバイスを通じて、学生たちに実践的な学びを提供し、AI技術への関心を高める取り組みを行いました。学生たちは積極的に参加し、活発な質疑応答が行われました。
また、ワークショップでは豊橋ステーションビル株式会社代表取締役社長の浅野卓様に特別講演を行っていただきました。浅野様は、情報技術社会の未来を担う学生たちに向けて、豊橋市の活性化にAIを活用する方法についてのご指導をくださいました。学生たちはそのアドバイスを参考に、地域への貢献を目指して学習を進めていきました。
下半期では学んだことを基に、探究テーマと競技テーマの2チームに分かれてそれぞれ取り組み、甲子園本番に挑みました。
交通量調査×AI=豊橋を活気のある町にしたい!
AI甲子園では、2つのテーマによって審査が行われます。1つ目は競技テーマである、アナログ時計の画像からAIを使って時間を認識する「アナログ時計読み取りAI」です。本競技では、アナログ時計の⻑針と短針を読み取り、正確に時分を当てるAIを作成します。競技当日に運営より10枚のアナログ時計画像が提供され、制限時間20間で予め作成したAIにより時分を推定し、10枚分の差分合計が最も小さな高校が勝利となります。予選大会にて豊橋商業高校は、6位中4位の成績を収めました。
2つ目は、各校がそれぞれ地域の問題など好きなテーマをAIで解決する「探究テーマAI」です。解決したいテーマを設定し、そのテーマに基づいてAIを作成します。作成したAIの成果は、プレゼンテーション形式で発表し、その結果によって評価されます。「学食の売上向上をサポートするAI」や、「自転車で通学する高校生が危険箇所に差し掛かる際に注意を喚起するAI」など、各校から様々な探求テーマAIが発表される中、豊橋商業高校からは「豊橋市の活性化」というテーマに焦点を当てたAIについての発表が行われました。
まず、探求テーマAIを作成するにあたり、イベントが豊橋駅周辺の人口増加に影響を及ぼすという仮説を立てました。この仮説から、イベントの実施場所を工夫することで駅周辺が賑わうのではないかと考え、「Toyohashi SmartCity Project」から提供された人流センサデータと自分たちの学校行事として毎年行っている交通量調査のデータを活用し、「交通量の相関関係を分析し人流解析を行うAI」を作成しました。
人流センサとは調査範囲に設置したビーコンやWiFiアクセスポイント、そこを通行する人が携帯しているスマートフォンなどのモバイル端末との交信記録から、人の流れの変化を検知=センシングする仕組みです。ここから取得されたデータと交通量調査のデータを掛け合わせて、実際の人通りと人流センサとの間に相関関係を導き出せるのではないかと学生らは仮設を立てました。
分析手順:
① まず、交通量調査の結果とセンシングデータの相関関係を分析
② 次に、イベントが開催された日のセンシングデータを人数に置き換えて分析
③ 最後に、駅周辺が活発化するイベントの実施場所を推測
分析結果から、仮説通りにイベントの実施場所を工夫することで豊橋駅周辺の人流を増加させることが可能であることが分かりました。特に広小路やときわ商店街など、駅近辺でイベントを実施することで、他のエリアも増加する傾向が確認できました。
予選大会にて本探求テーマは第3位。2位との差は0.4点で本選出場まであと一歩という結果でしたが、審査員からは「データの整理・分析が細かくできていて素晴らしかった」と高評価をいただきました。
共創によるAIプロジェクトの成果と未来への展望
AI甲子園の最終結果は惜しくも予選敗退という結果になりました。しかし、今回のプロジェクトで制作したAIはウェブインパクトと豊橋商業高校による「共創」の賜物です。学生たちと共にアイデアを出し合い、試行錯誤を繰り返すことで、実際にAIを使って問題を解決する経験を積んでもらうことができました。学生たちはAI技術を理解し、自らの手でプロジェクトを進めるための基礎知識と応用力を身につけることができたのではないでしょうか。
今後もウェブインパクトは、このような教育支援活動を通じて、次世代の技術者育成に貢献してまいります。
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